Starshipとは?SpaceXの超大型ロケットを調べてみました【宇宙投資】

Starship(スターシップ)は、SpaceXが開発している超大型の完全再利用ロケットです。

これまで宇宙ロケットは使い捨てが当たり前でした。Starshipはロケットを飛行機のように繰り返し使うことで、打ち上げコストを桁単位で下げようとしています。それが実現すれば、宇宙ビジネスの構造は大きく変わります。

SpaceXとはどんな会社かはすでにまとめたので、今回はStarshipに絞って調べてみました。


目次

Starship、一言で言うとどんなロケット?

Starshipは2段構成です。名前がやや紛らわしいのですが、ロケット全体の名前が「Starship」で、下段ブースターが「Super Heavy(スーパーヘビー)」、上段の宇宙船(Ship)とあわせて「Starship」と呼ばれます。

  • Super Heavy:高さ約71m、Raptorエンジン33基の下段ブースター
  • Ship(宇宙船):高さ約50m、Raptorエンジン6基の上段宇宙船
  • 合計全長:約121m

日本のロケットと比べるとこうなります。

ロケット 全長 LEO(低軌道)積載量 再利用
H3(JAXA) 57〜63m 最大 約6.5トン ❌ 使い捨て
Falcon 9(SpaceX) 約70m 再利用時 約15トン ✅ 下段のみ
Starship(SpaceX) 約121m 最大 約100トン(目標値) 🎯 完全再利用(目標)

※Starshipのペイロードは試験中のため目標値。

H3の約2倍の全長で、積載量は15倍以上。スペースシャトル(LEO積載量 約25トン)と比べても4倍です。推進力(スラスト)も、スペースシャトルの約3,000トンに対してStarshipは約7,590トン——約2.5倍あります。

H3ロケット打ち上げ(JAXA)
JAXAのH3ロケット(全長57〜63m)。Starshipはこの約2倍の高さ。(Public Domain)
スペースシャトル・コロンビア打ち上げ
スペースシャトル(LEO積載量 約25t)。Starshipはペイロードで4倍以上を目指す。(NASA / Public Domain)

なぜそんなに安くなるの?——「完全再利用」の仕組み

ロケットが高い最大の理由は「使い捨て」だからです。Falcon 9はすでに下段ブースターを回収・再利用することで打ち上げ費用を約110億円まで下げています。Starshipはさらに一歩進んで、上段の宇宙船(Ship)も含めて完全再利用を目指しています。

打ち上げ後、Super Heavyは逆噴射しながら発射台に戻り、「チョップスティック(Chopstick)」と呼ばれる巨大なアームでキャッチされます。上段の宇宙船(Ship)も大気圏再突入後に軟着水し、回収・再利用します。

IFT-5でチョップスティックアームにキャッチされたSuper Heavyブースター
2024年10月のIFT-5で、Super Heavyが発射台のチョップスティックアームにキャッチされた直後。(CC BY 2.0 / Steve Jurvetson)

このチョップスティックキャッチが2024年10月のIFT-5で世界初成功。直径9m・重さ数百トンのブースターが発射台アームにキャッチされた瞬間でした。


打ち上げコストはどのくらい変わる?

ロケット 打ち上げ費用(目安)
Falcon 9(現在) 約110億円
Starship(現在の試算) 約135億円
Starship(完全再利用後・SpaceX目標) 将来的に 約15億円以下

※将来目標値はSpaceXが言及した数字をもとにした試算。確定値ではありません。

完全再利用が実現すれば、「1トンを宇宙に送るコスト」は現在の数分の1になる計算です。


どれだけ重いものを運べる?——ペイロード比較

LEO(低軌道)積載量の比較

Starship(再利用・目標)
約100トン
Falcon Heavy(使い捨て)
約64トン
Falcon 9(再利用)
約15トン
H3(使い捨て)
約6.5トン

※Starshipは試験中のため目標値。


ここまでの試験の歩み——IFT-1〜11

Starshipは2023年4月から統合飛行試験(IFT)を繰り返してきました。

IFT-6のStarship、ISSから撮影
IFT-6(2024年11月)のStarshipをISS(国際宇宙ステーション)から撮影した写真。(NASA宇宙飛行士 Donald Pettit撮影 / Public Domain)
時期 一言で言うと
IFT-1 2023年4月 飛んだ!でも4分で爆発
IFT-2 2023年11月 宇宙空間まで到達!でもSuper Heavy(下段)もShip(上段)も帰路で喪失
IFT-3 2024年3月 大気圏再突入に挑戦——両機とも喪失
IFT-4 2024年6月 両機が海上軟着水に初成功!🎉
IFT-5 2024年10月 Super Heavyをチョップスティックアームでキャッチ——世界初 🥢
IFT-6 2024年11月 ブースター再キャッチ成功。Shipは着水後に爆発
IFT-7 2025年1月 Shipが飛行中に爆発(機体の部品トラブル)
IFT-8 2025年3月 Ship大気圏再突入・軟着水成功 ✅
IFT-9〜11 2025年〜
2026年初
再利用・機能試験を反復。各種改善を重ねる

IFT-12は2026年5月20日に予定されています。

IFT-5打ち上げ
IFT-5(2024年10月)のStarship打ち上げ。(CC BY 2.0)

Starshipは何に使われるの?——3つの用途

① Starlink衛星の大量投入

SpaceXの現在の主な収益はStarlink(衛星インターネット)です。計画では約4万2,000基の衛星が必要で、現在の約6,000基からまだ数万基の打ち上げが残っています。Starshipはその打ち上げ費用を大幅に下げる核となります。

Starlink衛星の打ち上げ
Falcon 9で打ち上げられるStarlink衛星のパック。(CC0 / SpaceX Official)

② NASAの月着陸ミッション(アルテミス計画)

NASAはアルテミス計画の月面着陸船(HLS)としてStarshipを選定しています。複数の契約を合わせたNASAとの総契約額は約6,000億円(約40億ドル)。試験が順調に進めば、この巨額契約がSpaceXの確実な収益になります。

アルテミスI打ち上げ
アルテミスI打ち上げ(2022年11月)。アルテミス計画の月面着陸船としてStarshipが選定されている。(NASA / Public Domain)

③ 長期目標:火星移住

Elon Muskの最終目標は火星への人類移住です。実現時期には様々な見方がありますが、SpaceXの企業価値(時価総額)を語る上で欠かせない長期シナリオの一つです。


Starshipが進むと、どんな株に影響する?

恩恵を受けやすい可能性がある銘柄

AST SpaceMobile(ASTS)
スマートフォンに直接衛星通信を提供する企業。衛星を多く打ち上げるほど事業が拡大するため、安い打ち上げコストの恩恵を直接受けます。Starlinkとは「既存の携帯キャリアと連携する」点で差別化しており、競合というより補完関係に近いです。

Intuitive Machines(LUNR)
月面着陸ミッションを担う企業。NASAのアルテミス計画でStarshipと連携するミッションを受注しており、Starshipの試験進捗が直結します。

Planet Labs(PL)
地球観測衛星を運営。打ち上げコスト低下は衛星の更新コストを下げ、採算性の改善につながります。

競合として注意が必要な銘柄

Rocket Lab(RKLB)
小型ロケット「Electron」が主力。Starshipが安く大量打ち上げできるようになると、小型ロケット需要の一部が代替される可能性があります。ただし中型再利用ロケット「Neutron」を開発中で、衛星製造事業も拡大しており、影響は限定的という見方もあります。私もRKLBには以前から注目しています。

Viasat(VSAT)
静止軌道の衛星インターネットが主力。Starlinkのコストがさらに下がれば、競争上の不利が広がるリスクがあります。

Boeing(BA)——SLS(スペース・ローンチ・システム)への影響
NASAのSLSはBoeing主導で製造されていますが、1回の打ち上げに4,000億円超かかるとも言われています。Starshipが月着陸の主役になれば受注減少のリスクがあります。ただし防衛・宇宙契約は政治的要因も大きく、即座に影響が出るとは限りません。

SpaceX自体への投資

SpaceXは現在非公開企業のため、一般の個人投資家が直接株を買う手段はありません。IPO(2026年6月予定)が実現すれば直接投資が可能になります。Starshipの試験進捗はIPO時の企業評価額(バリュエーション)に直結すると見られています。


まとめ——試験の進捗が宇宙産業株のカタリストになる

Starshipは「ロケットが飛ぶかどうか」の話ではなく、「宇宙へのアクセスコストが桁単位で変わるかどうか」という話です。試験が成功するたびにStarlinkのコスト構造が改善し、SpaceXのIPO評価額が高まり、関連銘柄に影響が出る——そういう視点で見ると、IFT-12(2026年5月20日)の行方も単なる「ロケット打ち上げニュース」ではなくなってきます。

引き続き追っていきます。

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