5月20日のStarship第12回試験、何がいつもと違うの?調べてみました

SpaceXの次世代大型ロケット「Starship(スターシップ)」の第12回飛行試験が、日本時間2026年5月20日7時30分に予定されています。今回は単なる試験の繰り返しではありません。第3世代への移行、新型エンジン、新しい発射台と、複数の「初」が重なるタイミングです。しかもIPO(株式上場)を6月に控えた時期でもあります。何が起きているのか気になって、調べてみました。

今回の試験がいつもと違う理由

Starship打ち上げ(過去の飛行試験より)
打ち上げに向かうStarship(過去の飛行試験より) 撮影:Steve Jurvetson / CC BY 2.0

前回のIFT-11(2025年10月13日)はV2世代の最終試験として成功し、ブースターと宇宙船ともに計画通り着水。V2の開発に一区切りがつきました。今回IFT-12は、そこから大幅に設計を刷新した第3世代(V3)の初飛行です。

今回が「初めて」になる要素をまとめると、次の通りです。

  • 第3世代Starship宇宙船・Super Heavyブースターの初飛行
  • 新型エンジン「Raptor 3」の初使用
  • 新しい第2発射台(Pad 2)からの初打ち上げ
  • Starlink衛星シミュレーター22基の放出(シリーズ最多)

なお今回は、V3への設計変更が大きいため、ブースターのキャッチ(空中回収)は行わず、分離後はメキシコ湾へ着水する予定です。まず「飛ばして分離できること」を確認することが最優先のミッションです。

IFT-5でMechazillaに捕捉されたSuper Heavyブースター
IFT-5(2024年10月)で実現した史上初のブースター空中回収。IFT-12ではV3設計変更のため、キャッチは行わずメキシコ湾へ着水の予定 撮影:Steve Jurvetson / CC BY 2.0

エンジンが「43トン」軽くなると何が変わるか

今回初使用のRaptor 3エンジンは、センサーや制御機器を内部に統合することで、エンジン1基あたり約1.1トン(約2,400ポンド)の軽量化を達成したとされています。

Starshipのエンジン総数はSuper Heavyに33基、宇宙船に6基の計39基。単純計算で機体全体が約43トン軽くなります。

🚀 Starshipのペイロード能力:V2 → V3の変化(目標値)

V2(従来)
約35トン
V3(今回〜)
100トン以上(目標)

LEO(地球低軌道)への再利用時ペイロード。V3は飛行試験での検証待ち。出典:SpaceX発表・各社分析より

ペイロード能力が約3倍になるということは、1回の打ち上げで運べるものが劇的に増えるということです。Starlinkの衛星を大量に一括投入したり、将来的には宇宙空間でのデータセンター構築や月面への大型物資輸送なども視野に入ってきます。

さらにRaptor 3は推力も向上しています(海面版:約250トン重、真空版:約275トン重)。軽くなってより強くなった、というのは単純に強力なアップグレードです。

IFT-5のSuper Heavyブースター着地燃焼
IFT-5での着地燃焼。33基のRaptorエンジンが逆噴射し速度を落とす 撮影:Steve Jurvetson / CC BY 2.0

第2発射台が動き始める意味

今回の打ち上げは、テキサス州スターベースに新設された第2発射台(Pad 2)からの初飛行でもあります。

1基の発射台しかない現状では、試験の間隔が詰まりません。整備・点検・次機の組み立てがひとつの台に集中するためです。第2発射台が稼働すれば、片方で整備中にもう片方から打ち上げられる体制が作れます。

SpaceXが目指す2026年の打ち上げペースは年間8〜12回。第2発射台なしではこの目標は達成できません。今回のIFT-12は、そのスケールアップへの最初の一手です。

ところで、実運用はいつ頃になるの?

「試験が何回も続いているのはわかったけど、実際いつ本番になるの?」と私も気になって調べてみました。現時点の目標スケジュールをまとめると、こんな感じです(あくまで目標値なので、ズレる可能性は大いにあります)。

時期(目標) 内容
2026年後半 V3でのブースター空中回収(Mechazilla)再開
2026年後半〜2027年 軌道上燃料補給の実証(Starship同士がドッキングして燃料を補給)※SpaceXの目標は2026年後半だが、試験進捗次第
2027年後半 NASAとの月着陸船(Starship HLS)地球軌道試験
2028年目標 NASAアルテミス計画・有人月面ミッション(最初の大きな実運用)
2030年目標 火星への無人物資輸送(Musk氏の構想)

最初の「本番」になりそうなのは、NASAのアルテミス計画で月着陸船として使うことです。NASAとSpaceXは2021年に契約を結んでおり、Starshipが実際に宇宙飛行士を月面に届ける日を目指しています。

「2028年に人が月へ」というのは、正直まだ半分SF的に感じます。ただ、Falcon 9が今や週に複数回飛ぶ”当たり前のロケット”になっていることを考えると、5〜10年後のStarshipがどんな状況になっているか、正直まったく想像できません。そこが面白いところでもあります。

打ち上げはIPOの約4〜5週前——意味することは?

SpaceXのIPOは2026年6月中旬〜下旬の価格決定が見込まれています。IFT-12の打ち上げ(5月19〜20日)はその約4〜5週前にあたります。

このタイミングは偶然ではないと思います。ロードショー(機関投資家への説明会)が6月上旬に始まるとすれば、IFT-12の結果はそのプレゼン資料に直接使えます。「V3が成功した」という実績を持って投資家の前に立てるかどうか——SpaceXにとって、かなり大事なタイミングなのではと思います。

逆に言えば、失敗した場合のIPOへの影響も気になるところです。SpaceXは過去に何度も失敗から学んできたため、1回の失敗でIPOが飛ぶような状況ではないと思いますが、投資家心理への影響は避けられないでしょう。

まとめ:5月20日の朝、何を見るか

第12回飛行試験で個人的に注目したいポイントを整理すると、こうなります。

  • 第2発射台から正常に打ち上がるか(新発射台の初稼働)
  • ブースターと宇宙船の分離が成功するか(V3初飛行の最低ライン)
  • Raptor 3エンジンが正常に燃焼するか(後続ミッションへの信頼性確認)
  • Starlink衛星シミュレーター22基の放出が成功するか(商業展開への準備)

全部成功すれば、IPO前に「V3は飛んだ」という事実が積み上がります。試験の様子はSpaceXのYouTubeでライブ配信される予定なので、日本時間の早朝ですが、気になる方はぜひ確認してみてください。

試験結果が出たら、このブログでも続報をまとめます。

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