Synspective(290A)とは?——5/22のRocket Lab打ち上げで業績加速する日本のSAR衛星銘柄を調べてみました

2026年5月22日、ニュージーランドのRocket Lab射場から1機のElectronロケットが打ち上がります。乗っているのは、日本企業Synspective(シンスペクティブ/東証グロース:290A)のSAR衛星「StriX」9機目です。SAR(合成開口レーダー=地表を電波で観る衛星)を多数連携させた「コンステレーション(衛星群)」を作る日本の宇宙ベンチャーで、5/22の打ち上げが事業計画の重要な一歩になります。投資家としても気になる銘柄なので、調べてみました。


目次

Synspective(290A)とは?——一言で言うと

SynspectiveのSAR衛星StriXの1/6スケールモデル
SynspectiveのSAR衛星「StriX」の1/6スケールモデル(2026年Space Symposiumにて展示)。アンテナを広げると約5mになる。(CC0 / Blervis)

Synspectiveは小型SAR衛星「StriX(ストリクス)」を自社開発・運用する慶應義塾大学発の宇宙スタートアップです。2018年2月創業、2024年12月19日に東証グロース市場に新規上場(銘柄コード290A)。公開価格480円に対して初値は736円と、上場初日に+53%の好スタートを切りました。

創業者は新井元行CEO(東京大学博士)と、慶應義塾大学の白坂成功(しらさかせいこう)教授。白坂教授は国の研究開発プログラム「ImPACT」で小型SAR衛星の開発を率いていた研究者で、その成果を社会実装するためにSynspectiveが設立されました。新井CEO個人は東大ですが、共同創業の慶応教授が技術の源流——という構図です。

目指しているのは30機のStriX衛星コンステレーション。2020年代後半までに完成させ、地球上のあらゆる場所を24時間体制で観測できる体制を作ろうとしています。


SAR衛星とは何?——天気と夜を選ばない目

項目 光学衛星 SAR衛星
観測方法 可視光・赤外線をカメラで撮影 電波(マイクロ波)を発射して反射を受信
夜間観測 ❌ 不可(光が必要) ✅ 可能
悪天候時の観測 ❌ 雲があるとほぼ不可 ✅ 雲・雨を貫通
主な用途 地図作成・農業観測など 災害監視・インフラ点検・防衛

SAR(合成開口レーダー)は「自分から電波を出して、反射波で地表を観る」方式です。光に頼らないので夜でも観測でき、電波が雲や雨を貫通するため悪天候の影響も受けません。台風通過直後の浸水状況・地震後の地盤変動・夜間の海上監視——光学衛星では見えない場面で力を発揮します。

近年、防衛・災害対応・インフラ監視の需要が高まり、SAR衛星市場は急成長分野。Synspectiveはこの分野で日本トップクラスの民間企業です。


30機コンステレーション計画——現在地

打ち上げ済み 8/30機

<これまでの実績>

2020年12月 初号機「StriX-α」打ち上げ成功(Electronで実証機投入)
2021〜2025年 2〜7機目を順次打ち上げ・運用開始
2026年3月21日 8機目打ち上げ成功

<次の打ち上げ>

🚀
2026年5月22日 18:30 JST「Viva La StriX」(9機目)
Rocket Lab射場(ニュージーランド・マヒア半島)からElectronで打ち上げ。成功すれば「2026年末10機運用目標」まで残り1機に

<今後の計画>

2026年末 軌道上運用10機達成
🎯
2020年代後半 30機コンステレーション完成目標

Rocket Labとの長期パートナーシップ

SynspectiveはこれまでのStriX衛星すべてをRocket LabのElectronで打ち上げてきました。2024年6月の初回10機契約に加え、2025年9月にはさらに10機の追加打ち上げ契約を締結。Rocket Labとは合計21機、加えてSpaceX Falcon 9相乗りでも3機分を確保しています。

🚀 メイン契約
Rocket Lab Electron
合計21機の打ち上げ枠(2024年6月の初回10機契約+2025年9月の追加10機契約)。Electron顧客として単一最大規模
🤝 補完契約
SpaceX Falcon 9相乗り
3機分の打ち上げ契約。低コスト相乗りでコンステレーション展開を加速
📦 進捗
これまで8機を打ち上げ
2020年12月の初号機〜2026年3月の8号機まで全てRocket Labで成功。9機目が5/22打ち上げ予定

Rocket LabのElectronは1機あたり最大300kgまでの小型衛星を「専用便」で打ち上げられるロケット。約100kgのStriX衛星を、Synspectiveの希望する軌道・タイミングに合わせて1機ずつ届けてくれます。日本のH3ロケットでは1機だけのために打ち上げるのは難しく、SpaceX相乗りでは軌道・日程の自由度が低い。Electron専用便はStriXコンステレーション展開に最適な選択肢になっています。


業績——売上が急加速の局面

指標 2025年12月期 実績 2026年12月期 会社予想
売上高 23.76億円 63.53億円(前期比+167%)
営業損益 −41.37億円の赤字 赤字継続見込み
経常損益(補助金込) −10.74億円の赤字 黒字化見込み
受注残高 249.6億円 前期末比+196億円
現金及び預金 約245億円 営業赤字で割ると約6年分のランウェイ
時価総額(2026年4月末) 約1,743億円

2026年12月期は売上が前期比+167%増と急加速する見込み。受注残高249.6億円は売上の10倍超で、今後数年の事業見通しがかなり見えている状態です。経常損益は補助金(宇宙戦略基金など)込みで黒字化見込み——本業の営業赤字は続きますが、現金245億円のクッションと政府支援でキャッシュフロー的には心配の少ない状態です。


政府支援と大型契約——事業基盤の柱

💰 宇宙戦略基金(経済産業省・JAXA)
補助金 最大237.9億円
「商業衛星コンステレーション構築加速化」プログラムに採択。
・初回交付決定額:164.6億円(〜2027年3月)
・支援予定上限額:237.9億円(〜2030年3月)
2026年度のステージゲート審査で変動の可能性
🛡️ 防衛省「衛星コンステレーション整備・運営等事業」
SAR担当で1,056億円
元請はトライサット(TraiSat)——三菱電機・SKY Perfect JSAT・三井物産が設立した特別目的会社。Synspectiveは三菱電機と共にSARイメージ取得分(5年で1,056億円)を再委託契約。
・契約期間:2026年2月〜2031年3月(約5年)
※ 防衛省→トライサット元請の全体事業は2,831億円規模

注目すべきは補助金と防衛省契約を合わせると総額1,200億円超の政府関連収入が中長期で確保されている点。これが「営業赤字でもキャッシュフローが回る」構造の核心です。一方で「政府依存度が高い」とも言えるため、政策変更リスクには注意が必要。


株価チャート(290A)

出典:TradingView

2024年12月の上場以来、株価は上場価格480円から大きく動いてきました。打ち上げ成功・補助金交付・防衛省契約締結など事業の節目で株価が反応しやすい銘柄です。


打ち上げ契約価格は?

Synspective–Rocket Lab間の具体的な契約金額は非公開です。ただし、Rocket Lab Electronの一般的な相場(1機あたり約11〜13億円/$7.5〜8.4M)から推定すると、Synspectiveが契約済みの21機分は約240〜265億円規模の発注になると見られます。

これは投資家として2つの読み方ができます:

  • Synspective目線:今後の主要コスト要因。30機構想達成には合計300億円程度の打ち上げ費用が必要
  • Rocket Lab(RKLB)目線:Synspectiveだけで$160M超の受注を確保している、単一最大の顧客

投資家として気になること

📈 注目ポイント
  • 売上+167%の急加速局面:受注残249.6億円が裏付け
  • 政府需要の追い風:宇宙戦略基金支援上限237.9億円、防衛省からの大型契約も
  • 日本のSAR衛星トップ民間企業:海外勢に対する国産代替として政策的に重要
  • 5/22打ち上げ成功=コンステレーション着実な進展:年内10機運用達成に1機を残すのみに
⚠️ リスク
  • 本業はまだ営業赤字:補助金頼みの黒字化、政府支援が縮小すれば収益基盤が揺らぐ
  • 打ち上げ依存リスク:Rocket Lab Electronに大きく依存。Electronの遅延や失敗は事業計画に直撃
  • 競合の存在:日本のiQPS、海外のCapella Space、フィンランドのICEYEなど競合多数
  • 上場後のボラティリティ:新興市場でも特に値動きが激しい銘柄。投資判断は慎重に

まとめ

5月22日のRocket Lab打ち上げは、単なる海外ロケットのニュースではなく日本のSAR衛星銘柄Synspective(290A)の事業進捗を直接動かすイベントです。30機コンステレーションへの道のりは、毎回の打ち上げの積み重ね。投資家としては、打ち上げ成否と業績進捗を両方追いかける価値のある銘柄です。

5月22日18時30分(日本時間)、ニュージーランドからの中継を一緒にチェックしてみませんか。

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