Rocket Lab(ロケットラボ)は、「SpaceXの次に来る宇宙株」として注目されている宇宙企業です。あらためてどんな会社か整理してみました。
ティッカーシンボルはRKLB(NASDAQ上場)。2026年5月時点で時価総額は約100億ドル(約1.5兆円)規模まで成長しています。
Rocket Lab、一言で言うとどんな会社?
Rocket Labは「小型ロケット打ち上げ」から始まって、今は宇宙船の設計・製造・打ち上げをワンストップで提供する宇宙インフラ企業へと進化しています。
2006年、ニュージーランド人のPeter Beck(ピーター・ベック)が創業。独学でエンジニアリングを学んだ彼は、2009年に民間企業として南半球初の宇宙到達(Ātea-1ロケット)を成し遂げました。現在の本社はカリフォルニア州ロングビーチで、ニュージーランドの打ち上げ射場も維持しています。

3つの事業柱
① Electron——世界で最も多く飛ぶ小型ロケット
Electronは高さ18m・直径1.2mの小型ロケットで、最大300kgのペイロードを低軌道(LEO)に届けます。2018年1月に初成功して以来、2026年5月時点で87機以上の打ち上げを完了——世界で最も打ち上げ回数の多い小型ロケットです。
| 項目 | Electron | Neutron(開発中) | Falcon 9(参考) |
|---|---|---|---|
| 全長 | 18m | 43m | 70m |
| LEO積載量 | 最大300kg | 最大13,000kg(再利用時) | 約15,000kg(再利用時) |
| 再利用 | 一部試験中 | 🎯 設計段階から再利用前提 | ✅ 下段のみ |
| エンジン | Rutherford×9(電動ポンプ) | Archimedes×9(液体メタン) | Merlin×9 |

Electronの面白いポイントはエンジンにあります。通常のロケットエンジンは燃料と酸化剤を高圧で送り込む「ポンプ」をガスタービンで動かしますが、ElectronのRutherfordエンジンは電動モーターでそのポンプを動かす世界初の量産型ロケットエンジンです。電動化によってガス発生器が不要になり、構造がシンプルになる分だけ部品点数・製造コスト・故障リスクが下がります。エンジンパーツはほぼすべて3Dプリントで製造しており、生産スピードが速いのも特徴です。
② Neutron——2026年末デビュー予定の中型再利用ロケット
Rocket Labの次の大勝負がNeutron(ニュートロン)です。全長43m、LEO積載量最大13,000kg(再利用時)の中型ロケットで、Falcon 9と真っ向から競合します。

初飛行は2026年Q4(10〜12月)が現在の目標です。ただし、当初は2024年を目標にしており、その後2025年に後退、2025年11月に2026年へ正式延期、さらに2026年初めの第1段タンク試験の失敗でQ4まで再後退——と遅延が続いています。初飛行は使い捨てで、2回目から再利用(ブースター回収)を予定。すでに打ち上げ前から5機の打ち上げ契約を締結しており、これはRocket Lab史上最大の打ち上げ契約を更新する内容です。米軍のポイント・ツー・ポイント(地球上の拠点間を宇宙経由で輸送する)テストへの採用も決定しています。
投資家目線では、Neutronの初飛行成功がRKLB株の最大のカタリストになると見ています。成功すれば「小型ロケット会社」というイメージを完全に塗り替え、SpaceXに次ぐ再利用ロケット企業として再評価される可能性があります。
③ Space Systems——宇宙船・コンポーネントの製造
あまり知られていませんが、Rocket Labの売上の大半はロケット打ち上げではなくSpace Systems(宇宙船・部品製造)が稼いでいます。Q1 2026の売上$200.3M(約300億円)のうち、Space Systemsが$136.7M(約200億円)を占め、構成比は68%に達します。
| セグメント | Q1 2026 売上 | 構成比 |
|---|---|---|
| Space Systems(宇宙船・部品) | $136.7M(約200億円) | 68% |
| Launch Services(打ち上げ) | $63.7M(約100億円) | 32% |
| 合計 | $200.3M(約300億円) | 100% |

Space Systemsの主な製品・サービスは次のとおりです。
- Photon(フォトン)宇宙船:顧客の目的に合わせてカスタム設計する小型宇宙船。ロケットで打ち上げたあとの軌道投入・ミッション運用まで一括で引き受けられるのが強み。NASAの月ミッション(CAPSTONE)などで採用実績あり
- 衛星バス:「衛星の共通ボディ」となるプラットフォームを複数サイズ揃えており、コンステレーション(多数の衛星を同時運用する仕組み)向けに効率よく量産できる体制がある。防衛省系の大型コンステレーション契約(SDA向け)などに採用
- 衛星部品:太陽電池パネルや姿勢制御装置など、衛星に必要な部品を自社で製造。他社の衛星にも搭載されており、打ち上げ事業より地味だが安定した収益源になっている
- 宇宙センサー・ロボットアーム:宇宙空間の物体を追跡・監視するセンサーメーカー(Geost・2025年買収)と、NASAの火星探査機にロボットアームを提供してきたMotiv Space Systems(2026年に約60億円で買収)を取り込み、防衛・宇宙探査分野への製品ラインを広げている
「衛星を打ち上げるロケット会社」ではなく「衛星そのものと部品も作る会社」——それがRocket Labの現在地です。Space Systemsの売上が全体の3分の2を占めることで、Electronの打ち上げ頻度に左右されにくい安定した収益基盤ができています。
最新業績(Q1 2026)——数字が加速している
| 指標 | Q1 2026 | 前年比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 約300億円($200.3M) | +63.5% |
| 粗利率(売上総利益率) | 38.2%(粗利 約115億円/$76.5M) | 改善傾向 |
| 調整後EBITDA | 約18億円の赤字(−$11.8M) | 損失幅は縮小傾向 |
| 純損失 | 約68億円の赤字(−$45.0M) | まだ赤字(Neutron開発費が重い) |
| Q2 2026ガイダンス | 約330〜360億円($225〜240M) | — |
| 受注残高(バックログ) | 約3,300億円($2.2B+) | 過去最高 |
| Q1新規契約数 | 31件 | 2025年通年に匹敵する件数を1四半期で |
粗利率38.2%は「売上の4割近くが粗利として残る」ことを意味します。まだ純損失は続いていますが、これはNeutron開発費が重くのしかかっているため。売上が伸びて粗利率も改善しているので、Neutronが一段落すれば黒字化が見えてくる構造です。バックログ$2.2B(約3,300億円)は今後の売上見通しの裏付けで、決算発表後に株価が+46%急騰したのも納得できる数字です。
主な大型契約:
- 宇宙開発局(SDA)契約:約1,200億円($816M)——防衛省の衛星コンステレーション向け
- HASTE契約:約290億円($190M)——米軍の極超音速飛行試験20回分
- Neutron 5機契約:金額非公開(HASTE契約を上回る過去最大規模と発表)
投資家として気になること
注目ポイント
- Neutron初飛行(2026年Q4目標):成功すれば株価の大きなカタリストに
- 5/22のElectron打ち上げ(日本のSynspective社の衛星):日本企業との取引実績はRKLBの強み
- 収益の多様化:Space Systemsがロケット打ち上げより多くの粗利を稼ぐ構造に変わりつつある
- 防衛需要:政府・軍との大型契約がバックログを下支え
リスク
- まだ赤字:純損失は四半期約68億円の赤字(−$45M)。現金残高は約2,200億円($1.48B)あるものの、Neutron開発費が重く赤字は続いており、初飛行が遅れるほど資金を削り続けるリスクがある
- Neutronの遅延リスク:今年初めにタンク試験で失敗があり、スケジュールは流動的
- SpaceXとの競争:Falcon 9が圧倒的なコスト競争力を持つ。Neutronが「なぜ選ばれるか」を証明する必要がある
- 時価総額とのバランス:成長期待が先行した株価。業績拡大が続かないと調整リスクも
まとめ
Rocket Labは「小型ロケットの会社」から「宇宙インフラの会社」へ急速に変わっています。売上は四半期で300億円を超え、バックログは3,300億円超。Neutronが飛べば、SpaceXに次ぐ再利用ロケット企業として市場から再評価される可能性があります。
「Neutronが飛ぶかどうか」——これが今のRKLBの最大の注目点です。2026年Q4、あと半年の話です。
